【初心者向け】⑤長調と短調の違いや近親調など、調性について解りやすく解説します。
ここでは調性(key)の仕組みや調性どうしの関係を説明します。
長調(メジャーキー)に比べて短調(マイナーキー)はやや複雑になるのでしっかり説明したいと思います。
1.はじめに
調と音階
はじめに、まず区別したいのが「調」という言葉と「音階」という言葉です。おおまかに説明すると調という場合は雰囲気「明るい」や「暗い」などを表したい意図があります。音階という場合は調の構造、仕組みに意識を向けたい意図があります。
まとめると、
・明るい雰囲気の調を長調と呼び、長音階(メジャースケール:Major Scale)という音程関係で構成されている
・暗い雰囲気の調を短調と呼び、短音階(マイナースケール:Minor Scale)という音程関係で構成されている
という風に説明できます。
2.長調について
2-1やっぱり基本は(全・全・半) 全 ( 全・全・半)
まずは長調(メジャーキー)の導き方を説明します。長調は長音階(メジャースケール)で構成されています。ここで重要になるのが(全・全・半) 全 ( 全・全・半)の音程関係です。
(全・全・半) 全 ( 全・全・半)についてはこちらの記事をご覧ください。
(全・全・半) 全 ( 全・全・半)に基づいて音を対応させることで全ての長音階(メジャースケール)を作り出せますし、そこから各種スケールにも発展させられます。
ここでひとつ頭の体操も兼ねて複雑な調を考えてみましょう。
2-2長調を導いてみよう
例1.「シ」メジャーキー (ロ長調) (B Major Key)
主音(基準になる音)は「シ」です。
「シ」を基準にした場合、続く音階はどうなるでしょうか?
(全・全・半) 全 ( 全・全・半)に当てはめて考えてみましょう。
このような音の並びになります。これで「シ」の音を主音とした明るい雰囲気の調「ロ長調」を導けました。
例2.「ド♭」メジャーキー(変ハ長調) (C♭ Major Key)
主音は「ド♭」です。シとはエンハーモニックの関係です。
さて、ド♭を基準にした場合、続く音階はどうなるでしょうか?
(全・全・半) 全 ( 全・全・半)に当てはめて考えてみましょう。
このような音の並びになります。これで「ド♭」の音を主音とした明るい雰囲気の調「変ハ長調」を導けました。
聴感上では同じに聞こえますが意味としては全く違うものとなるのがややこしいところです。つまり、ある音が#あるいは♭であるかの判別は調との関係によって決まります。
ぜひ、(全・全・半) 全 ( 全・全・半)に当てはめて色々な長調を考えてみてください。
長調についての説明は以上です。
3.短調について(マイナースケール)
3-1.3つのマイナースケール
短調はマイナースケールで構成されますが、マイナースケールには3つの種類があります。それぞれ見ていきましょう。
1.ナチュラルマイナースケール(自然短音階)
短音階はエオリアンスケールを基準に考えます。エオリアンスケールについては音階の記事をご覧ください。
まずはおさらいからです。ドを基準に考えてみましょう。
エオリアンスケールのことをナチュラルマイナースケール(natural minor scale)といいます。
そしてマイナースケールにはもう二つ種類があります。
2.ハーモニックマイナースケール(和声短音階)
ナチュラルマイナースケールの「シ♭」を半音上の「シ」に変化させたスケールです。
特徴はラ♭とシが増2度関係になっていることです。このような音階をハーモニックマイナースケール(harmonic minor scale)といいます。
3.メロディックマイナー(旋律短音階)
メロディックマイナースケール(melodic minor scale)には厳密には上行形と下行形があります。
上行形はナチュラルマイナースケールの「ラ♭」「シ♭」を半音上の「ラ」「シ」に変化させたスケールです。
下行形はナチュラルマイナーと同一になります。
メロディックマイナースケールには二種類あるとはいえ下行する際に上行形を用いてはいけないということはありません。
大切なのは音階が変わることで雰囲気にどう影響するかを把握することです。なのでそれぞれの短音階がもつ雰囲気を確認していきましょう。
3-2.それぞれの短音階がもつ雰囲気
3つのマイナースケールを紹介したところで今度はそれぞれのスケールがもつ雰囲気の違いを聴いてみましょう。
どの音階も微妙に雰囲気が異なります。
それぞれのもつ雰囲気を説明することはここでは避けます。ぜひご自分の感覚を基準に言語化してみてください。
3-3.マイナースケールの和音設定
基本的にはマイナースケールからダイアトニックコードを導き、TDSの機能に沿って和音設定をします。
Cナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードは次のとおりです。
作り方のコツとしては基本的にはナチュラルマイナーを主に使用してⅤの和音のとき限定でハーモニックマイナー、メロディックマイナーを使うと形になりやすいです。
4.近親調について
4-1.近親調とは
基準の調(主調)と特に繋がり(共通項)の多い調を近親調といい、主調に対して「平行調」「同主調」「属調」「下属調」の主に4つがあります。近親調をしっかりと把握することで転調や借用和音など複雑な概念もいくらか理解しやすくなります。
そしてもう一つ重要なのが、「近親調」とは調どうしの関係です。つまり「長調」や「短調」といった雰囲気を指す場合の「調」とは意味合いが異なるので注意しましょう。
4-2.近親調の種類
近親調の種類と、主調とどのような共通項があるかみてみましょう。
平行調:#/♭の数が同じ
・長調で主音の短3度下のマイナースケールで構成される調
・短調で主音の長3度上のメジャースケールで構成される調
「音階について」の項目で軽く触れましたが、Cナチュラルマイナースケールの3番目の音「E♭」から音階を始めてE♭-F-G-A♭-B♭-C-D-E♭とつなげると(全・全・半) 全 ( 全・全・半)のかたちとなり「E♭メジャースケール」となります。
このとき#/♭の数(調号)に変化はありません。
同主調:主音が同じ
・同じ主音を持つメジャースケールとマイナースケールの関係
たとえば、C メジャースケールとCマイナースケールの関係です。調号の数が3つ変化します。
次の表で平行調と同主調の関係を視覚的に表してみました。
属調
・完全5度上のメジャースケール
メジャースケールを基準に#/♭を変化させない場合、完全5度上のスケールはミクソリディアンスケール(Mixolydian Scale)になります。ミクソリディアンスケールの第Ⅶ音を半音上げることで完全5度上のメジャースケールを作ることができます。よって#方向に調号が1つ変化します。
下属調
・完全4度上のメジャースケール
メジャースケールを基準に#/♭を変化させない場合、完全4度上のスケールはリディアンスケールになります。リディアンスケール(Lydian Scale)の第Ⅳ音を半音下げることで完全4度上のメジャースケールを作ることができます。よって♭方向に調号が1つ変化します。
次の表で属調と下属調の関係を視覚的に表してみました。
5.調号からの調の判別方法
ここから少し楽譜のお話になります。ここでは簡単に済ませて別途楽譜の読み書きの記事で詳しく紹介します。
5-1.音部記号について
ト音記号やヘ音記号、一度は聞いたことがあるかもしれません。それぞれどのような意味なのか見ていきましょう。
ト音記号はぐるっと囲まれたところが「ソ」「G」の音になります。
ヘ音記号は点々の間が「ファ」「F」の音になります。
5-2.五線譜上の音名
音符は基本的に「線の上」もしくは「線の間」に配置されます。
「上」と「間」は常に2度関係で「ミとファ」「シとド」は#/♭が何もついてない場合は短2度です。それ以外は長2度です。
ト音記号の下の「ド」とヘ音記号の上の「ド」は同じ高さになります。
5-3.調号から調を判別する
調号からの調性の判別の方法#系と♭系の2種類あります。
#系の場合
#系の場合は一番右の#は第Ⅶ音を示しています。よってその短2度上が主音となります。
♭系の場合は右から2番目の♭の音が主音になります。
(ちょっとややこしい話になるので興味のない方は飛ばしていただいて問題ありません。
「調号無し」をどう解釈するかというと、F-Major Keyで F-Major Scaleの完全5度上のスケールはC-Mixolydian Scaleです。
第Ⅶ音を半音あげることで完全5度上のMajor Scaleを作り出せるので、C-Major Keyとなります。
今度は反対に、G-Major KeyでG-Major Scaleの完全4度上のスケールはC-Lydian Scaleになります。
C-Lydian Scaleの第Ⅳ音を半音下げることで完全4度上のMajor Scaleを作り出せるのでC-Major Keyとなります。
つまりC-Major Keyは「シ」と「ファ」に♮がついていると考えられるわけです。)
調性についての解説は以上になります。おつかれさまでした!